デカイぜ

旨いもの食べると幸せになれるよね。
みんなでわいわい食べるとこれまた美味い。

 

さくっと独り飯も多いからなぁ、オレ。
んー腹へってきたなぁ。

 

なんて事考えてたら思い出した。

 

こじんまりしてて洒落てるレストランがわりかし近所あってさ。
美味いんすよ。

いつも混んでる店内は、「ウーノ!アラビアータ!」「ベーネ!!」
って会話が飛び交うイタリアン。

 

そこに20代半ばくらいのカップルがやってきてさ、
独り黙々とアラビアータ食ってるオレの隣のテーブルに座ったんだよね。

 

「わーいい感じねー♡」「だろー」

 

いかにもデートっぽい会話は微笑ましいかぎりなんだが
二人の声デシベル高め。

デカイんだ。声が。

 

二人は注文を終え、注文が厨房に伝えられる。

「ベーネ!!」

厨房の声が威勢良く声が響く、その直後。
彼女が彼に言ったんだ。

 

 

「わー英語なんだねー♪」

 

 

一瞬。
せまい店内に緊張が走った。

はっきりくっきり聞こえてしまったのだ。

英語・・・

と。
すぐさま彼は言った。

 

「英語なんだよー。いい感じだろー?」

 

(なっ!なんですと!!)

 

さっきも言ったが二人の声は大きい、体感で75デシベルオーバー。

 

(あぁ、ツッコミたい・・・)

 

今、それができたらどんなにスッキリするだろう・・・。
他のお客もそう思っていたに違いない。

ツッコミたいという我々の想いは行き場を無くしてさまよっていた。

店内は妙な空気に満ちていたよ。

 

そんなオレたちの気持ちなんかおかまい無しに
二人は楽しそうに映画の話しをしている。

・・・洋画の話しだ。

 

もうこれ以上二人の話しを聞くのがこわい。

聞きたくないのに聞こえてしまうんだもの。

何かあればツッコミたくなるに決まってる。

 

タイミングよく注文したエスプレッソがきた。

小さなテラスに席を移動して煙草を吸いながら
滅多に入れない砂糖を入れてかき混ぜながら独り考えた・・・

 

いや・・・まてよ。

 

彼女はいい。

しかし・・・
彼の言葉は本当に”おバカさん”なのか???

 

もしや・・・

惚れた女のおバカ発言を知りながらも、
いたずらにツッコミを入れたりもせず、
美味しく食事が出来る環境をつくった・・・

 

これがあの

”まるごと包み込むやさしさ” なのか?!?!

おぉ・・・
デカイ男だぜ。

 

ぬぬう・・・

ツッコミたくてウズウズしていたオレ。

小さいなー。甘いなー。
砂糖入りのエスプレッソ飲みながら

なぜかほっこりした気持ちになったりした。

 

実際のとこ
やさしさだったのか、彼もおバカちゃんだったのかはわからん。

 

しかしどっちにしても、デカイ男だったな。声は。

 

お、いい時間。

んーパスタ食いたくなってきた。

 

誰か行かない?

posted by: momo寿志